製本用接着剤について(4)

 メチルセルロースは様々な種類のあるセルロースエーテルの中の一つです。それらは天然セルロースから化学的に誘導された物質で製造方法は色々とありますが、最終的な構造はセルロース分子中のグルコース残基の三つのOH基を適当にアルコキシル基で置換したものです。メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシルメチルセルロースなどかなり多種のものが造られています。

 実際に市販されている製品としては、信越化学工業(株)のメトローズ(メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース日本曹達(株)のHPC(ヒドロキシプロピルセルロース)、SE Tylose GmbH & Co. KGのTylose(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース)、米国ハーキュレス社のKlucel(ヒドロキシプロピルセルロース)などなど、様々なものがあります。これらは種類によってその物性がやや異なり、また同一製品中でもいくつかのグレードがあるため使用目的にあった製品グレードが選択できます。

 保存・修復関係の文献にも、上記の製品名をはじめいくつかの品名があげられて推奨されていますが、他の製品でも目的にあったグレードを選べば、ほぼ問題なく使用できると思われます。そこで比較的手に入れやすい信越化学工業(株)のメトローズを中心に、セルロースエーテルの特徴などについて話を進めます。

(つづく)