書写材料の変遷 2
パピルス
パピルスは丈の高い、花をつける淡水の水辺に生えるカヤツリグサという草で、茎の形が三角形です。緑色の外皮があり、その内側に細胞と脈管の束でできた髄からパピルスは作られます。
古代ギリシャ人は、食物として利用されるものをpapuros、同じ植物でも縄や籠・紙などを作るのに利用された場合はbublosと2つの言葉を使用しました。現代の英語やフランス語などの紙に対応する語は、このギリシア語のpapurosに由来します。またbublosという単語からは、聖書(bible)や愛書家(bibliophile)などの本に関する言葉が多く派生しています。
<製造法>
(パピルスの製造法は、古代エジプトの資料には見られず、プリニウスの「博物誌」のなかで説明されていますが、曖昧な部分があり、後世の人々はその製造法を研究してきました。)
時代や地域、用途によって少しずつ工程は異なりますが、大まかな方法は次のとおりです。
1.パピルスの茎を扱いやすい大きさに切る。
2.緑の皮をむき、薄片に切り分ける。このときの薄片の切り出し方にも、平行に縦割りする方法や桂剥きする方法など諸説あります。
3.薄片を互いに直角になるように2層に重ね、上から圧力をかけてシートにする。
4.乾燥後、滑らかな表目にするために貝殻や石、象牙などで磨く。
パピルスの層の接着には、パピルスに含まれる糖分が接着剤として働いていると言われています。また、パピルスは通常2層ですが、ギリシアのパピルスには3層のものもあり、豪華本などに使用されたと考えられています。
このようにしてできたパピルスのシートは、短い内容の場合は1枚で使用されましたが、巻物に仕立てる場合は長く継ぐ必要があり、その接着には小麦粉糊が使用されました。また、冊子の形もありますが、パピルスは折れや曲げなどに弱く、度重なる使用によりすぐに破損してしまいます。
パピルスは、長い間、地中海世界ほとんどすべての社会で書写材料として使用され続け、年号の明らかなものでは11世紀のものがあります。しかし、その耐久性は低く、酸化・脆弱化してボロボロになってしまったり、湿度の高い地域ではカビが生えて朽ちてしまったりして、乾燥した地域以外では、ほとんど残っていません。
参考文献
リチャード・パーキンソン「パピルス-偉大なる発明、その製造から使用法まで」學藝書林、1999年
http://www.touregypt.net/featurestories/papyrus.htm
http://en.wikipedia.org/wiki/Papyrus(図版)
つづく。。。