色紙の保存方法について
色紙の修復依頼がここ数か月で続いたため、その保存方法について一度まとめておきたいと思います。色紙を不適切な環境下に置いておくと、チリやホコリによる汚れ、紙の変色、擦れ、折れ、文字や描かれた絵の褪色などの劣化や損傷を受ける可能性があります。大切な色紙をより良く、より長く保存するためには、いくつかの点について気を付けなければなりません。
1)色紙を飾る場合
①紙はチリやホコリを吸着しやすい多孔質構造であるため、色紙はむき出しではなく額などに入れる。額に入れることで、折れや破損などの物理的損傷も防ぐことができる。
②光に含まれる紫外線・熱は紙の変色や描画材の褪色、材質の劣化を引き起こすため、直射日光が当たる場所に飾ることは避ける。室内の蛍光灯もなるべく長時間当たらないようにする。
③額は紫外線の透過を防ぐUVカットのガラスやアクリル板のものを使用するが、その性能も経年劣化するため、やはり紫外線が当たる量には注意する。
④額の裏板は酸性物質を含むベニヤ板であることが多く、その酸性物質が色紙に移行すると紙の劣化や変色を引き起こす恐れがあるため、直接裏板が色紙に触れないように中性紙のボード(間紙)を挿入する。
2)色紙を保存容器に収納して保管する場合
①色紙がむき出しの状態では光や汚損の影響、物理的損傷などを受けやすいため、中性紙で包んだり、中性紙のフォルダーや封筒、保存容器に収納する。保存容器に収納することで、劣化原因の1つである外気の湿度変化による影響を受けにくくなる。
②カビや虫の被害を避けるために、湿度の安定した通気性の良い冷暗所に保管する。
③保存容器に収納すると、中の作品の状態が見えないため、劣化が進行していても気が付かないことがある。定期的に取り出して色紙の状態をチェックすることで、損傷・劣化が重症化する前に対策をとることができる。
インターネット等では、ビニール袋等に入れて密封するといった方法を見かけたりしますが、現代の色紙の多くに使われている芯紙は再生紙で酸性紙の場合が多く、そのまま密封すると逆に紙の劣化を促進させる恐れがあります。インターネットからの情報には誤った記述も時折りありますので、必要な場合には専門家に相談されることをおすすめ致します。