仮綴じ本について考える

 仮綴じ本とは、文字通り正式な装丁がなされる前の状態(=本文紙を綴じ、表紙を簡単に取り付けたもの)のものです。綴じ方には折丁を糸で簡単にかがっただけのものの他、麻紐の支持体を用いてかがったもの、平綴じ等があります。表紙は本文紙よりも薄手の紙(色紙)が背の部分のみで糊(膠)付けされたもので、中身を保護することだけを目的として取り付けられました。
ちなみに、20世紀になると本文紙よりも厚手の表紙が用いられるようになり、この表紙の三方(天地、前小口)を少し大きくとって折り込んだものを日本ではフランス装と呼んでいます。

 伝世しているものの中にはアンカットの状態の資料も多く、修復する際にはこれを開けないことはもちろんですが、オリジナルの姿をとどめてきた簡易な表紙に関してもわざわざ改装する必要はありません。改装することによってその文化的・学術的な価値がほとんど失われてしまうことになると考えるからです。

【弊社で行った仮綴じ本の修復事例】
仮綴じ本の保存修復処置

東北大学付属図書館漱石文庫中の仮綴じ本の保存修復処置