Prize binding/bookの修復
Prize binging/bookとは、17世紀にはフランス北部とオランダで始まっており、18世紀からはアイルランド(トリニティカレッジ)、1875年頃から第一次世界大戦(20世紀半ばとも)までイギリスでも採用された製本様式です。これらの地域の教育機関において優秀者への賞として贈られました。学校は地元の製本屋と契約し、人文科学の古典的な書籍を18世紀の繊細な装丁に似せて再製本されました。特徴として、仔牛革の総革装、小口・見返しに同じマーブル、花布、箔押しタイトル、おもて表紙に校章の箔押し等があげられます。
今回、修復のご依頼をいただいたものはイングランド北西部チェスターにあるThe King’s School(1541年創立)で制作されたもので、おもて表紙の紋章は同校のウェブサイトでも同種のもの(左側の紋章)を確認することができました。中身は、1885年にロンドンで出版されたウォルター・スコットの『MARMION』で木口木版による非常に美しい図版が多数収められています。
修復作業としては、表紙の外れ/外れかけに対して外側、内側(見返し側)から違和感なく染色した和紙にて美しい外観を損なうことなく修復/補強いたしました。
掲載を快くご了承いただきましたご所蔵者様には深く御礼申し上げます。
【参考】
https://cool.culturalheritage.org/don/dt/dt2975.html
https://en.wikipedia.org/wiki/Prize_book