細密画の筆
最近読んだクリストファー・デ・ハメル著『中世の写本ができるまで』で細密画の筆について書かれている部分がありました。そこには「16世紀の教本には、肖像画のミニアチュールに適した筆の作り方が載っている。アーミン(オコジョ)かマダラリスの尻尾の毛の束を細長い紙で巻いて縛り、羽軸の根元に差し込む。」とありました。
あれれ!と思い、山田和著『インドミニアチュール幻想』をいま一度引っ張り出して見てみると、細密画の筆について「細密画の細部はリスの尾の毛を使った筆によって描かれ、・・・その穂は十ミリほどで全体がカーブしており、このカーブはリスの尾の毛が本来持っている性質なのだが、細密画家たちはそれを矯正しないまま束ねることによって、・・・穂先だけを紙面に垂直に立てて描けるように工夫した。」とあり、西洋でもインドでもリスの毛を細密画の筆として(形状の違いはあるにせよ)使っているではありませんか。
身近な小動物の毛を吟味していったら偶然リスの毛にたどり着いたのか、それとも中国で発明された筆が西へ伝播していく中で細かいものを描くには「リスの毛が良いらしい」ということになったのか。そうなると、西洋はインドの影響を受けたとも考えられることになりますが、果たして。。。
インドミニアチュールを再現した様子が分かるサイトに先端がカーブしたリスの筆が載っています。
https://www.jeeamirza.com/blog/2017/11/12botanical-indian-miniature-day1
https://www.dsource.in/resource/miniature-painting/introduction