資料の何をどう考えて、どう直すのか? 〜近代図書資料の保存修復を通して〜
弊社では伝世してきた姿に大きな価値を見出し、なるべくその姿に変更を加えずに利用の安全性と将来的な保存を担保することを目指して作業を行っております。本資料の場合も刊行から約70年の間に蓄積された様々な痕跡(=情報)を本資料のアイデンティティとして捉えつつ、利用と保存とのベストミックスを実現できるよう作業しました。
【資料】『近代名医一夕話』(昭和12年 日本医事新報社)
【主な作業】
・ドライクリーニング
・綴じを解体し、将来的な劣化の原因となるステープルの錆を完全に取り除く
・表紙、見返し、本文紙の損傷/劣化に対して修復/補強を行う
・表紙、見返し、本文紙の脱酸性化処置
・麻糸で綴じ直し、表紙と中身の再接続を行った後、元背を貼り戻す
・弱アルカリ性ボードで保存容器(差し込み式)を製作・収納
【処置前】
【処置後】
おもて表紙(処置後) 背表紙(処置後) おもて見返し(処置後) 開いた状態(処置後)