製本用接着剤について(6) 膠その1
膠およびゼラチンは、動物の結締(結合)組織、皮、筋、骨などの中に含まれるコラーゲンの加水分解によって生じる高タンパク質の一種です。着色した粗製のものを膠(glue)といい、精製して無色透明の純度の高いものをゼラチンといいます。したがってその主成分は膠もゼラチンも同一ですが、膠は残存する不純物の効果により、ゼラチンとはやや異なる物性を示し、それが接着剤や顔料のバインダーとして好ましい結果を示します。
膠の製法には大別して2種類の方法があります。皮および類似物からつくる方法と、骨から製造する方法です。ただし、一般に骨膠は皮膠に比べて品質が劣るといわれています。
膠の製法を簡単に説明すると、まず原料の生皮(今日ではほとんど牛皮)その他を水で十分に洗浄し、次に石灰漬けを行います。これはコラーゲン以外のタンパク質および脂肪を取り除くためで、石灰乳(消石灰の懸濁液)を用い、処理後は十分な水洗の後で中和を行う。こうしてコラーゲンとして精製したものを水と共に煮沸すると加水分解を受けてゼラチンとなり、水に溶出します。これを濃縮後、乾燥させて膠ができます。
かつては一回分の原料で水を何回か取り替えて抽出を行い、一番汲から七番汲くらいまで抽出を繰り返して製造を行い、一、二番汲の最上品を晒膠と呼び、以下三千本(あるいは京上)、色好(あるいは相上)という様に等級づけられていました。しかし、今日では二番汲くらいまでで、等級も分けてはいません。現在市販されている製品としては三千本膠、粒膠、鹿膠、兎膠などがあります。ただし、鹿膠といっても実際の原料は牛皮で、工業用膠の高級品を日本画画材用に適するように加工したものです。
(つづく)