書写材料の変遷 1

 紙が書物の媒体として使用されるようになる以前、古代より身近にある様々なものを書写材として使用してきました。

○粘土板
 紀元前3000年からメソポタミア地方で使用されました。まだ粘土板が柔らかいうちに楔形文字を刻み込み、文字を記しました。保存性に優れ、現在出土している他にも、まだ多くが土の中に埋まっているといわれています。文書・記録としての用途が多いのですが、有名なギルガメッシュ叙事詩などの叙事詩・神話などが記されたものも残っています。

○石
 古代より現代まで各地で記録や書物の媒体として使用されました。王たちもその功績を永く記録に残そうと、その堅固さゆえに石を選択し、記念碑などを作りました。しかし、実際には風化したものも多くあります。

○青銅板
 青銅もその耐久性からエジプトから中国・ローマまでの地域で広く使われました。

○ワックスタブレット
 紀元前9世紀よりも前からギリシアで用いられていました。木枠に蜜蝋・白亜・石膏などを流し、先の尖ったもので書きました。表面を削ったり、温めたりすることで、文字を消すことができたため、メモ代わりとしても使用されました。複数のタブレットを紐等で結んでつなぐこともでき、16枚も連結したものもあります。

○甲骨
 紀元前1500年頃から、中国では亀甲・獣骨などに象形文字が刻まれました。

○木簡・竹簡
 紀元前4世紀頃から1㎝幅程度の木や竹の細片を紐で結び合わせたものが、文書・書物として中国などで使用されました。木簡・竹簡は1枚につき1行ですが、1枚に複数行書かれたものは木牘といいます。

○帛書
 帛とは絹織物のことで、やはり中国で紀元前7-5世紀には使われはじめました。しかし、絹は非常に高価なうえに、劣化しやすく残りにくいという欠点がありました。

○貝多羅葉
 インドやタイなど東南アジアの一部で使われました。ヤシの葉柄部分を切り開いて平らにし、同じサイズに切り出したものに2つ穴を開け、各葉をそこでつなげて使用しました。紙が使用されるようになってからも、その形は残りました。尖った筆記具で文字を刻むように書き、そこに煤(油で練った)をすりこんで文字が判読できるようにしました。

○樹皮布
 ポリネシアや南米・日本など太平洋の文化の中で、カジ・パン・タパ・アマテ・ダロワンなどの靭皮部分を使って作られました。樹皮を水に浸して、叩いて伸ばし、衣料・書写材料として用いられます。インドネシアのダロワンなどは、写本や文書などに利用され、中にはパーチメントのようなものもあります。
 上記に関する画像は下記サイトをご参照ください。
http://www.historyofscience.com/G2I/timeline/index.php?category=Book+History
http://www.papermuseum.jp/column/paper/001.html
つづく。。。