書見台を使いましょう
本ブログにおいて昨年も記事(https://www.cfid.co.jp/2020/02/12/book-support/)にした書見台ですが、一橋大学社会科学古典資料センターが2019年に行った全国の大学図書館を対象とした西洋貴重書保存管理状況に関するアンケート(138機関が回答)で書見台に関する質問・回答に下記のようなものがありました。
●貴重書の物理的破損を防ぐため、必ずブックサポートシステム(書見台)の上に置いた状態で閲覧してもらっている。
「できている」13% 「ややできている」12% 「できていない」75%
●大きな角度で開閉を繰り返すと背、背とカバーの接合部、ノド、花布等が破損するため、120度以下(状態が悪ければより狭い角度)の角度で閲覧してもらっている。
「できている」8% 「ややできている」21% 「できていない」71%
弊社が取り引きさせていただいている図書館の中には、自作の書見台を閲覧者用に複数個揃えているところもあるのですが、常日頃から書見台等を用いて貴重書を閲覧に供している状況には程遠いという現状にあるということが分かりました。
書見台を使用する目的は、閲覧による開閉で(製本構造、使用材料等々によっても大きく左右されますが)表紙ジョイント、背表紙、花布、綴じ等にかかってくる負荷を出来る限り減らすことにあります。貴重書(に限らず大切な書籍)を伝世したままの状態で永く保持するための施策の一つであることは間違いありません。
また、閲覧関連で別の質問・回答には下記のものが気になりました。
●手の皮脂が付着するのを防ぐため、ページを抑えるときはスネーク・ウェイト(西洋貴重書用の紐状文鎮)を使用してもらっている。
「できている」9% 「ややできている」9% 「できていない」82%
●糊付きの付箋や酸性紙製の栞は貴重書の表面に糊や酸性物質を残すため、利用を禁止している。
「できている」38% 「ややできている」17% 「できていない」45%
付箋の使用については過去のブログ(https://www.cfid.co.jp/2020/09/12/stickynote/)でも触れていますが、製法が確かな和紙や中性紙の紙片を用意しておくべきでしょう。また、皮脂の付着を防ぐ目的でのスネーク・ウェイトの使用について、鉛玉ウェイトをビロード生地で包んでスネーク・ウェイトは自作することもできますし、大前提として手洗い・アルコール消毒は現下の状況もありますが必須です。
【参考文献】
馬場幸栄「西洋貴重書保存インデックスによる西洋貴重書保存管理の指標と評価」
一橋大学社会科学古典資料センター年報40(2020)