「vatman’s drip」か「coucher’s drip」か
古麻布を原料とし、産業革命前の手法(スタンパーによる叩解、ゼラチンによるサイジング、吊干し)で漉かれたという紙を見ていたら、「vatman’s drip」あるいは「coucher’s drip」と呼ばれるクレーター状の痕跡が中央右寄りにありました。
「vatman’s drip」とは、紙を漉いた時にvatman(漉き工)の手や腕から水が湿紙に滴り落ちたり、上桁(deckle)を持ち上げた時にデッケルから湿紙に滴り落ちたりした水によって上面(フェルト側)に形成されるもの。上面(フェルト側)に形成されるため、chain lineやlaid lineが途切れないという特徴があります。
「coucher’s drip」とは、割合的には少ないようですが、湿紙がcoucher(伏せ工)によってフェルトに伏せられる時に漉き具(mould)から滴り落ちた水によって形成されるもの。この場合はワイヤー側にcoucher’s dripが形成される。そのため、chain lineやlaid lineが途切れます。
透過光の画像を見ると、chain lineが途切れているようには見えます。