【作品の概要・組成】
多色刷りリトグラフ。作者は馬場檮男(1927~1994)。1984年制作のタイトルは「航空ショー」。本紙はコットン紙(ARCHES)で、上下は耳付き、左右は刃物によって切断されている。画面の左下にエディションナンバー「27/30」、中央に作品タイトル「航空ショー」、右下にサイン「Kashio Baba ‘84」と鉛筆書きされている。
全体寸法=左辺:565mm、右辺:570mm、上下辺:715mm
画面寸法=左辺:459mm、右辺:458mm、上辺:598mm、下辺:600mm
厚み=約0.41mm。
【作品の状態】
全体的な状態は良好だが、裏板のベニヤ板によるものと思われるフォクシングがマージン部分(特に下辺)に多く生じ、作品の鑑賞の妨げになっている。本紙の処置前pHは5.0~6.0。
【処置方針】
マージン部分にあるフォクシングを漂白し、酸性域にある本紙を長期的な保存のために脱酸処置を行い安定した状態にする。オリジナルの窓マット・台紙は組成が不明なため、安定した中性紙ボード(ピュアマット)を使用して新たに制作する。
【主な処置内容】
①練りゴムを用いてドライクリーニング
②サクションテーブル上にて全体を精製水で洗浄
③フォクシング部分のみにスポット脱酸(炭酸水素マグネシウム水溶液)を行い、フォクシングの軽減(中性化)
④フォクシング部分のみに過酸化水素水を部分的に筆で塗布して漂白
⑤全体を精製水で洗浄し、最終脱酸(炭酸水素マグネシウム水溶液)。処置後のpHは9.0。
⑥防水透湿性素材にて間接的に湿りを入れ、吸取紙に挟んでフラットニング
⑦ピュアマットでブック型マットを制作して、作品を和紙ヒンジで固定。
部分漂白 フラットニング ブックマットに固定
【処置前後の状態】
全体(処置前) 下辺左(処置前) 下辺右(処置前) 全体(処置後) 下辺左(処置後) 下辺右(処置後)