1804年の創業以来、200年を超える歴史を持つ清水建設株式会社様がご所蔵されている貴重な社史資料への保存修復処置の記録(一部)です。「温故創新の森 NOVARE」内の「NOVARE Archives(清水建設歴史資料館)」での収蔵・展示に向けたプロジェクトの一環となっています。
事例1)
【タイトル】『清水釘吉翁』
【資料概要】
清水組五代店長を務めた清水釘吉(1867-1948)の伝記。1943年刊、非売品。総布装くるみ製本、機械綴じ。表装布にはエンボスあり、スリップケース収納。
【損傷/劣化】
表紙と中身は完全に分離しているが、表装材の状態は良好。綴じ糸の切断により綴じはバラバラな状態。おもて見返しノド元は切断され、本文紙には軽度の破損や折れが見られる。
【主な保存修復処置】
①背貼り・背固めを除去し、綴じを解体
②本文紙の破損(薄口楮紙)修復、折れ伸ばし・補強(薄口楮紙)
③折丁背を補強し、綴じ直しに耐えられるようにする(染薄口楮紙)
④リンクステッチによる綴じ直し後、丸み出し・バッキング
⑤残存する花布は洗浄し、欠失分は復元して貼り戻し
⑥表紙と中身の再接合
⑦スリップケースの錆を除去後に染和紙で補填し、破損部分も修復して再組立て
【修復後の状態】
事例2)
【タイトル】『内山熊八郎』
【資料概要】
清水組で工事長、専務取締役を務めた内山熊八郎(1881-1936)の伝記。1939年刊、非売品。総布装くるみ製本、機械綴じ。表装布にエンボスあり。
【損傷/劣化】
表裏の表紙(ボード)は見返しとともに中身から分離している。表装材が表紙(ボード)から外れており、背部分天地には摩耗とほつれが生じている。綴じは綴じ糸の切断によりバラバラな状態。本文紙には軽度の破損や欠損等が生じ、いくつかの図版には糊離れの他に破損等も見られる。
【主な保存修復処置】
①背貼り・背固めを除去し、綴じを解体
②本文紙の破損(薄口楮紙)・欠損(染中厚楮紙、染薄口楮紙)修復、折れ伸ばし・補強(薄口楮紙)
③折丁背を補強し、綴じ直しに耐えられるようにする(染薄口楮紙)
④図版の折れ伸ばし・補強(薄口楮紙、薄美濃紙)、破損(薄口楮紙、薄美濃紙)・欠損(厚口楮紙)修復
⑤リンクステッチによる綴じ直し後、丸み出し・バッキング
⑥表紙と中身の再接合
⑦表装布の欠損・破損を染楮紙で修復し、表紙ボードに貼り込み
【修復後の状態】
【参考】
https://www.shimz.co.jp/heritage/column/
INAX REPORT №170「生き続ける建築-4 田辺淳吉」松波秀子