【所蔵】横浜開港資料館

【資料の概要】
 イギリスの外交官アーネスト・サトウ(1843-1929)が最後まで手元に残していた写真アルバム(サトウ旧蔵写真アルバム)と日本に残った妻の武田兼が所蔵していた写真アルバム(武田家旧蔵写真アルバム)です。イギリスのサトウ家の人々や日本の公使館勤務時代の同僚、日本で出会った伊藤博文、井上馨、勝海舟等の写真が収められています。
 詳しくは、公式Youtubeでご覧いただけます。

事例1)
【資料名】サトウ旧蔵写真アルバム

【製本の状態】
 総革装くるみ製本。おもて表紙は全面が螺鈿で装飾され(下地に胡粉)、前小口には金属製の留め具が取り付けられている。綴じに綴じ糸は用いず膠で固められているだけで、いわゆる無線綴じ。写真台紙のノド元に10ミリ程度の足(台紙と同じ厚紙)が継ぎ足されることで、開きの改善が図られている。各々の台紙はノド元に貼られた革によって接続され、最初・終の台紙では見返しと接続されている。

【損傷/劣化状態】
 おもて表紙の螺鈿には欠損や剥離の他、浮きが数か所見られる。おもて表紙ジョイントには脆弱化や軽度の破損があるが、表装革全体としては所々で摩耗が生じている程度である。綴じは糊枯れによる足の外れや膠の劣化による緩みが生じている。写真台紙には軽度の茶変色や汚損、写真挿入部分の破損の他、ノド元の革に破損や欠損、脆弱化も見られる。

【処置前の状態】

【主な処置内容】
①刷毛やワイピングクロスで表紙や小口、台紙等をドライクリーニング
②螺鈿の浮いている部分に膠を流し込んで固着させる。
③一枚目の台紙のノド元(革)を開けて、背貼り・背固めを除去
④ノド元革の破損、欠損を染色した和紙で修復し、外れた足の貼り戻しを行う。
⑤和紙で背貼りを行った後、取り外して洗浄した花布を貼り戻す。
⑥クータを取り付け、表紙と中身を再接合する。
⑦開けた一枚目の台紙のノド元(革)を貼り戻す。
⑧台紙の破損部分に糊差し

【処置後の状態】

事例2)
【資料名】
武田家旧蔵写真アルバム

【製本の状態】
 総革装くるみ製本。前小口には金属製の留め具が取り付けられている。綴じに綴じ糸は用いず膠で固められているだけで、いわゆる無線綴じ。写真台紙のノド元に10ミリ程度の足(台紙と同じ厚紙)が継ぎ足されることで、開きの改善が図られている。各々の台紙はノド元に貼られたクロスによって接続され、最初・終の台紙では見返しと接続されている。

【損傷/劣化状態】
 表装革のジョイント部分はほとんど切断され、ヒンジ(寒冷紗)と見返しのみで表紙が接続している状態。表裏の表装革には銀面剥離や摩耗等が生じている。背革は中身から分離し、欠損、脆弱化、摩耗、レッドロットの他、セロハンテープにより修理された剥離片もある。綴じ、花布、見返しの状態は良好。本文紙は軽度の茶変色、写真挿入部分の破損、表層部分の剥離等が見られる。

【処置前の状態】

【主な処置内容】
①刷毛やワイピングクロスで表紙や小口、台紙等をドライクリーニング
②背革を取り外し、背貼り・背固めを除去
③和紙で背貼りを行った後、取り外して洗浄した花布を貼り戻す。
④クータを取り付ける
⑤背表紙芯紙を取り付け、背革の天地折り返し部分に入れてあった麻紐を貼り戻す。
⑥新規背革(タンニン鞣し仔牛革)を染色、革漉き後に貼り込み。
⑦台紙の破損部分を修復
⑧背革剥離片のセロハンテープを除去し、元背と共に貼り戻す。

【処置後の状態】