【所蔵】秩父宮記念スポーツ博物館・図書館
1959年に開設された独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)が運営する日本で唯一の総合スポーツ博物館及び図書館。オリンピックと日本のスポーツ史を中心とする展示場とスポーツに関する本や雑誌を公開する専門図書館とから成り立っている。
事例1)
【資料名】野球界 第6巻第10号
【刊行年】大正5年(1916年)
【資料の概要】
明治41(1908)年から昭和34(1959)年まで日本で発行していた月刊野球専門誌。当時の日本国内だけでなく、アメリカを中心とした海外の情報も多く取り上げている。野球だけでなく、当時野球と並ぶ人気で国技でもある相撲の記事にも力を入れており、相撲の特集号を発刊することもあった。
【資料の状態】
ステープル平綴じ(2か所)の紙くるみ製本。おもて表紙ジョイントには重度の破損、うら表紙ジョイントには軽度の破損が見られる。表裏の表紙には茶変色の他に、主に周縁部に欠損、破損、折れ、摩耗等の損傷や劣化が生じている。背表紙は部分的に剥離し、欠損や破損、折れ、摩耗等も生じている。ステープルには錆が発生し、部分的に折丁が外れている。本文紙や図版に重度の茶変色が生じている他、軽度の破損、欠損、折れ、錆の移行等も見られる。
【処置前の状態】
【主な処置内容】
①刷毛やワイピングクロスで表紙や小口、本文紙等をドライクリーニング
②綴じを解体し、背固め膠と錆を除去
③表紙、本文紙の洗浄と脱酸性化処置(炭酸水素カルシウム溶液)を行いプレス
④表紙と本文紙の損傷部分を適宜染色した和紙で修復/補強
⑤古色に染色した麻糸で綴じ直し
⑥染色した和紙で作った新規背表紙を貼り込み、表裏の表紙を再接続
⑦元背の貼り戻し
【処置後の状態】
事例2)
【資料名】中学生 第2年第5号
【刊行年】大正6年(1917年)
【資料の概要】
少年雑誌、中学生向け学習雑誌。主筆・有本芳水。科学記事、数学や英語などの学科、伝奇、立志伝、科学小説、漫画などで構成(大宅壮一文庫https://www.oya-bunko.or.jp/possess/tabid/81/Default.aspx)CiNiiで所蔵が確認できるのは5機関
【資料の状態】
ステープル平綴じ(2か所)の紙くるみ製本。ジョイントには軽度~重度の破損が見られる。表裏の表紙には茶変色の他に、周縁部に欠損、破損、折れ、摩耗等の損傷や劣化が生じている。背表紙は部分的に剥離し、欠損や破損、折れ、摩耗等も生じている。ステープルには錆が発生し、部分的に折丁が外れている。本文紙や図版に重度の茶変色が生じている他、軽度の破損、欠損、折れ、錆の移行等も見られる。
【処置前の状態】
【主な処置内容】
①刷毛やワイピングクロスで表紙や小口、本文紙等をドライクリーニング
②綴じを解体し、背固め膠と錆を除去
③本文紙の洗浄と脱酸性化処置(炭酸水素カルシウム溶液)を行いプレス
④表紙と本文紙の損傷部分を適宜染色した和紙で修復/補強
⑤色に染色した麻糸で綴じ直し
⑥染色した和紙で作った新規背表紙を貼り込み、表裏の表紙を再接続
⑦元背の貼り戻し
【処置後の状態】
事例3)
【資料名】相撲起顕 増補
【刊行年】昭和18年(1943年)
【資料の概要】
相撲の由来、力士名鑑、江戸時代からの番付が書かれている。著者の山本義一は明治19年に石川県に生まれ、『相撲年鑑』、『相撲叢書』(8巻)、『大相撲年代鑑』、『古今名力士百傑傳』等を著している。
【資料の状態】
機械綴じの総紙装くるみ製本。表裏の表紙はほぼ分離し、欠損、破損、剥離(浮き)、摩耗等の損傷や劣化が生じている。背表紙は欠失。綴じには緩みやノド割れが起きている。見返し紙は茶変色が生じ、軽度の破損や折れ等も見られる。本文紙は酸性劣化による重度の茶変色が生じて劣化が著しい(ぽろぽろ崩れる)。その他、軽度の汚損、破損も見られる。
【処置前の状態】
【主な処置内容】
①刷毛やワイピングクロスで表紙や小口、本文紙等をドライクリーニング
②綴じを解体後、本文紙の洗浄、脱酸性化処置(炭酸水素カルシウム溶液)を行いプレス
③本文紙の損傷に染色した和紙による修復と脆弱化部分の補強を行った後、折丁の繋ぎ直し
④綴じ直し(№60、支持体2本、2丁抜き綴じ)
⑤背固め後に丸み出しとバッキング
⑥クータと背表紙芯紙の取り付け
⑦表紙の損傷を染色した和紙で修復
⑧染色した和紙で制作した新規背表紙の貼り込み
【処置後の状態】
事例4)
【資料名】第6回極東選手権競技大会記念寫真帖
【刊行年】大正12年(1923年)
【資料の概要】
極東選手権競技大会は1913年にフィリピン、中華民国、日本を主な参加国として1934年まで10回開催された競技大会。本資料の第6回は大正12年(1923年)5月21日~26日まで大阪市立運動場等で行われた。
【資料の状態】
麻布が貼り込まれた表紙が表裏に付いた結び綴じで、下綴じには釘が使用されている。うら表紙は分離し、表装布には欠損、破損、折れ、剥離等が周縁部やジョイント等に見られる。角裂はほとんど失われている。本文紙にはノド元付近に破損や折れが生じ、図版にも破損等が生じている。
【処置前の状態】
【主な処置内容】
①刷毛やワイピングクロスで表紙や小口、本文紙等をドライクリーニング
②綴じ紐の取り外し
③旧角裂の断片を完全に取り除き、断片を参考に似寄りの角裂(絓)を貼り込み
④うら表紙のジョイント部分と表装布の欠損を中厚楮紙で修復
⑤うら見返しノド元の破損部分の貼り戻し
⑥本文紙の破損(薄口楮紙)の修復、折れ伸ばし
⑦染色した絹糸(五倍子、鉄漿染)で綴じ直し
【処置後の状態】